思いは続く。続けるは力なり。
長期的な視野に立ち、顔が見える関係で
2011年3月11日、東北地方を中心に、日本を未曾有の大地震が襲いました—— 。 「シナップとして被災地に何かできないだろうか」と、誰ともなく上がった声にみんなが反応し、復興支援活動が始まりました。 どのような支援を行うのか、長い時間をかけてスタッフ全員で話し合いました。 そうして決まったのが「一過性の支援」ではなく、「顔の見える関係で長く続ける」ということ。 数年にも及ぶといわれた被災地の生活や経済の復興に自分ごととして関わり、「長期的な視点で活動していく」と決意しました。そして、私たちが得意とするWeb・ITを活用したコミュニケーション作りの分野を中心に被災された企業の復興を継続的にお手伝いする。 こうして私たちのプロジェクトは始まったのです。
酔仙酒造株式会社
深刻な被害を受けた老舗酒造
東日本大震災による津波で、深刻な被害を受けた岩手県陸前高田市にある酒造メーカー「酔仙酒造株式会社」の復興をお手伝いしています。 「酔仙酒造」は2007年と2008年に、全国新酒鑑評会で金賞を受賞した『酔仙』を主力銘柄に、日本酒だけで年間約100万リットル出荷している老舗酒造会社です。 陸前高田市の被害は報道でも多く取り上げられたので、ご存知の方も多いでしょう。海に近い酔仙酒造も木造4階建ての倉庫を含む、全ての建物が150本のタンクもろとも水中に沈み、壊滅しました。 社員・役員計約60人のうち7名が亡くなられたことが何よりもつらい被害でした。
シナップと酔仙酒造との出会い
シナップは震災直後から、被災地の支援先を探していましたが、スタッフの親戚とのご縁で、津波で深刻な被害を受けた酔仙酒造のことを知りました。 震災からおよそ3カ月後の6月。実際に現地を訪れた私たちは、その光景に言葉を失いました。 当時の社長である金野靖彦さんと初めてお会いしたのは、酔仙酒造が復興へ向けてまさに動き始めている時でした。「このままでは終われない」という靖彦さんの言葉に、被災地の惨状にショックを受けていた私たちが、逆に励まされたことを今でも覚えています。 こうしてシナップでは隔週でスタッフが現地を訪れ、実際に酔仙の皆さまと顔を合わせ、お話ししながら、私たちの本業であるWeb・ITを活用したコミュニケーションづくりの支援を開始しました。
新サイトの公開と感動の初出荷
2011年7月、酔仙酒造は同業である岩手銘醸株式会社の協力で、一関にある玉の春・千廐営業所の製造設備を借り、新酒造りを始める準備に入りました。 工場を失ってから半年も経たずに酒造りを再開することに誰もが驚き、期待をもって見守っていました。 しかし、全てが順調に運んだわけではあありません。 お借りした設備は「寒造り」と呼ばれる気温の低い冬場に仕込む設備だったので、空調設備がなかったのです。 そこで製氷機で造った大量の氷を金属製の筒に入れ、直接樽の中に入れることで温度を下げるなど連日、大変な努力と試行錯誤が繰り返されていました。
そこにはまさに「このままでは終われない」と困難に立ち向かう、職人たちの姿がありました。 9月、震災から半年が経とうとする頃、シナップがお手伝いして制作した『酔仙』の新しいWebサイトが公開されました。 何度も打ち合わせを重ねて、公開に漕ぎつけた新しいサイトは私たちにとっても感慨深いものでした。 そして、ようやく酔仙酒造はサイトを通して、多くの人に情報発信ができるようになったのです。 公開後、Twitter上ではたくさんの酔仙酒造のファンから暖かい応援メッセージが届けられました。 そして10月、酔仙から新酒『雪っこ』が出荷されました。 震災から7カ月、文字通り全てを失った酔仙酒造にとって、この出荷は復興への大きな一歩となったのです。
新工場の設立と震災後初の大吟醸の販売
(左上)新工場として設立された大船渡蔵。(右上)一本松とRiseUp、KESENのメッセージを背に新たな大船渡蔵で行われた仕込み。(左下)震災後初めて行われた雪っこ出荷式(右下)特別なお酒である大吟醸酒に1際の想いを込めて発売された「酔仙×松徳硝子復興応援感謝セット」
その後も酔仙酒造はひたむきに努力を重ね、復興の道を目指しました。 2013年8月には大船渡に新たな工場を設立、新工場での仕込みを開始しました。 国の復興事業補助金が決まり、異例の早さでの新工場建設でした。 シナップはWebサイトやSNSの運用はもちろん、2013年には復興後初の大吟醸酒の発売に合わせ、極薄のガラス製グラス「うすはり」で人気の松徳硝子とのコラボレーション『酔仙×松徳硝子復興応援感謝セット』の商品企画にも携わりました。 数量限定のこの商品は様々なメディアにも取り上げられ、大きな注目を集めました。
常に感謝の心を忘れず、前進を続ける酔仙酒造
その後も酔仙酒造はひたむきに努力を重ね、復興の道を目指しました。 2013年8月には大船渡に新たな工場を設立、新工場での仕込みを開始しました。 国の復興事業補助金が決まり、異例の早さでの新工場建設でした。 シナップはWebサイトやSNSの運用はもちろん、2013年には復興後初の大吟醸酒の発売に合わせ、極薄のガラス製グラス「うすはり」で人気の松徳硝子とのコラボレーション『酔仙×松徳硝子復興応援感謝セット』の商品企画にも携わりました。 数量限定のこの商品は様々なメディアにも取り上げられ、大きな注目を集めました。
陸前高田未来商店街
シナップと未来商店街
「これから立ち上がる商店街の支援をしてほしい」という一本の連絡をきっかけに、2011年12月、陸前高田未来商店街の支援が始まりました。未来商店街は、震災で店舗を失った商店主が再スタートを誓って集まった商店街です。 当時は建物の代わりにコンテナを利用し、地元に戻った若者、ボランティアスタッフの協力を得ながら営業開始を目指していました。一方、その存在や活動をどのように知らせるかが大きな課題でした。 シナップは、より多くの方に未来商店街を知ってもらえるよう、Webサイトの制作、SNSの活用などでサポートを行いました。 そして、2012年5月「商店街の運営者が自ら情報を発信できる場」として、未来商店街のWebサイトが公開されました。
クリスマスイルミネーション
2012年12月、シナップで毎年行っていた「SINAP Christmas Project」の一環として、商店街にクリスマスイルミネーションを設置しました。 「暗い被災地の夜に、暖かい明かりを灯したい」そんな思いが商店街の皆さまに届き、暖かい感謝の言葉をいただいたことは社員一同の胸に今も残っています。 その翌年には2階建てのプレハブ店舗を建築。店舗数も増え、週末には朝市が行われるなど、地元の魅力あるスポットに。 そして2018年9月30日、仮設商店街の期限を迎えて解散。 多くの店舗は隣接する「アバッセたかた」を中心とした新商業エリアに移転し、新店舗となって再出発を果たしています。
大槌復興 刺し子プロジェクト
岩手県大槌町の女性達が取り組む刺し子プロジェクト
シナップでは2014年より、岩手県大槌町の女性たちが取り組む「大槌復興 刺し子プロジェクト」を支援しています。このプロジェクトは、避難所や仮設住宅の狭い場所でも「布と針と糸があればできる刺し子」の手仕事を通じて、つくり手の収入や交流の場を生み出し、女性が働いて社会へつながる場を作ることを目的に始まりました。 コースターやTシャツなど、様々なものにひと針ずつ心を込めて針を刺し、模様を描き出す東北伝統の刺し子を施した商品を販売しています。
シナップと大槌復興 刺し子プロジェクトとの出会い
「復興プロジェクトから大槌刺し子ブランドを確立したい。そのために現地の生産体制やメディア資産を活かした販売施策などの課題を解決したい」 。以前から親交があったプロジェクト発起人からの相談をきっかけに、プロジェクトはスタート。 シナップでは、Webサイトのリニューアル、商品のランディングページの作成、SNSを活用したソリューションのお手伝いをしています。
「大槌刺し子」として再出発
はじめは布地のコースターやふきんのオンライン販売からスタートした「大槌復興 刺し子プロジェクト」。オリジナル商品の販売のほかに、地域との連携、技術講習会など、様々な活動を続けてきました。 その道のりは決して平坦ではありませんでしたが、成果は徐々に身を結び、無印良品など企業とのコラボレーションを実現するにいたります。 そして、震災から10年。より多くの方に刺し子の精神を知ってもらいたいと、名称を「大槌刺し子」としてブランドを一新、再出発を果たします。 プロジェクト立ち上げから10年目、「大槌刺し子」から感謝状とシナップのロゴが美しい模様で描かれた刺し子が届きました。 私たちにとって、これは感慨深い出来事でした。