iPadを少し広い視点から見据えてみる。

2010.02.12

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SINAPの鈴木です。

かねてからのタブレットPCへの期待から発売されるされないの噂が絶えませんでしたが、
ついに2010年1月27日、アップルからiPadが発表されました。

私の周りではこのiPadに対して「買う理由が見当たらない」とか「でかいiPod Touch」などの声が
聞こえやや期待はずれだったという空気が漂っています。

iPadが搭載するiPhone OSはMac OS Xをベースに機能を削ぎ落とし、
マルチタスクではない、システムファイルを触ることもできないなど様々な面で「制限」を施しています。
とはいえ、iPhoneは携帯端末としては画期的なタッチスクリーン体験の提供もあって、
この「制限」がいわゆるPCを意識させない敷居を下げることに成功しているとも言えるでしょう。

このiPad発表時のなんとなく漂う残念感はiPadで通常のPCと同レベルのことをタッチスクリーンで行えるのではないかという期待が、蓋を開けてみるとiPod Touchと変わらなかったということ、なんではないかと思います。
個人的にもiPadはフラッシュも見れないし、メールもウェブも写真も今あるPCで充分。嗜好品という印象がぬぐえません。

しかし、少し視点を広く考えるとiPadは価値のあるプロダクトなのかもしれないと思うようになりました。


■視点その1:親でも使えるのでは?
うちの両親はほとんどパソコンが使えませんので、実家に帰ると使い方を教えることがあります。

例えば、ウェブサイトを見るだけでも、
PCを起動して、ユーザーアカウントを選択して、Windowsの「スタート」から「すべてのプログラム」を選んで、アプリを起動して、ネットに繋ぐのはeモバイルなので、接続のダイアログを開いて「接続」を押して等々・・・

使いやすいようにデスクトップにフォルダを作ってデータを配置しても、普段PCを使っていない両親にしてみれば、そもそもフォルダの概念すら持ってないのです。

そんな母親に自分のiPhoneで写真を見せたことがあります。PCでは悪戦苦闘していた母が、
指で写真をスライドさせて次々とめくっていきます。
よくわからなくなれば、ホームボタンで戻って、
また写真アプリのアイコンをタッチすればいいわけです。

これを見たときに、iPhoneは老眼で字が見えないことさえクリアになれば、間口の広いUIであることに気がつきました。

そしてiPadはまさにiPhone OSを大きくした端末です。iPadは普段PCに慣れ親しんでいるユーザー、それ以上のヘビーユーザーには物足りないと感じるかもしれませんが、パソコンが必ずしも得意とはいえない人にウェブサイト、写真、メールに接する機会を提供できるベストなマシンといえるのではないかと思います。


■視点その2:マウスで使うGUIが完成系なのか?
現在私達が使っているグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)はそれ以前のコマンドを打ち込んで操作するコンピューターからすれば、相当の敷居下げが行われ、コンピューターの一般化に貢献した画期的なインターフェースです。
しかし、そんなGUIでも我々が初めてコンピューターに触れたときのちょっとした苦労はもう忘れてしまっているかもしれないですが、うちの両親が悩むように、PCを使うためには現実世界の文房具や道具をを触るような感覚とは違い、ちょっと踏み込んだプロセスやPC独特の概念を覚える必要があります(ドラッグ&ドロップ、スクロールバー、ファイルが現実世界にあるファイルの形をしてなくてアイコンであることなど。)。

タッチスクリーンインターフェースはマウス使用型のGUIをさらに現実世界に近づけたインターフェースと言えます。
スクロールはバーを触るのではなくとも画面をずらすだけ、テーブルにおいてある写真の束を広げるようにアルバムが閲覧でき、本を読むようにスケジュール帳をめくる。iPadは現在のコンピューターの中でも限りなく人間の普段の生活の動きに即した作りになっています。

"I don't have to change myself to fit product.It fits me."
「製品に自分を合わせるのではなく、製品が自分の一部になるのです。」

上記のようにiPadの紹介ムービーでも言ってますが、タッチスクリーンは人間に一歩近づいた形態といえるでしょう。

もちろん、iPadでPCとアドビ系、オフィスのようなアプリケーションが使えるわけではないですし、物理キーボードの入力スピードを超えるソリューションが提供できているわけではありません。短期的にこのプロダクト良い悪い、欲しい欲しくないの話はあるかと思います。しかし、コンピューターの進化の歴史の中で大きく考えると、iPadの登場はツールが人に近づく大きな転換点になっているのではないかと思います。

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