EPUB3.0が可能にする電子書籍でのユーザ体験(1)

2011.04.22

こんにちは、内藤です。
昨年のiPadの発売以来、急速な盛り上がりを見せた電子書籍。この1年で様々なタブレット型コンピューター、または電子書籍リーダーを見かけるようになりましたね。最近ではその盛り上がりは一旦落ち着きを見せていますが、震災の影響で日本での発売が延期されているiPad2が発売されるようになると、また注目されていくのではないでしょうか。
さて、進化しているのは端末ばかりではありません。電子書籍のファイルフォーマットも開発が進められ、ユーザによりリッチな体験を与えてくれるように進化しています。今回はそんなファイルフォーマットの中でも一番注目度の高いEPUB3.0についてご紹介していきたいと思います。

EPUB(Electonic Publication)とは、電子書籍端末でコンテンツを閲覧するときに使用するファイルフォーマットの規格のひとつです。XMLをベースとし、XHTMLなどで作成したコンテンツを画像やCSSなどとともにZIP形式で圧縮後、拡張子を .epub に変えたものです。構造化データを持つことが可能で、テキストが画面に収まるよう自動的に調整されるといった特徴があります。オープンスタンダードな規格として公開されているため、iPadをはじめ、多くの端末で利用されています。(SINAPlog「今おさえておくべき電子書籍フォーマット」より引用 )

このEPUBなのですが、開発普及は米国の電子書籍の標準化団体である International Digital Publishing Forum (IDPF) によって行われているため、現在では基本的に英語に最適化された規格となっています。そのため、日本語での表現に対して以下のような仕様上の問題点があります。


・縦書きに対応していない。
・縦書きの中の横文字表現(例:単位)ができない。
・圏点を指定することができない。
 ※文字の強調を行うときに、親文字の脇または上下に付加する点のこと。
・割注(1行のスペースに小さな文字で2行が詰め込まれた注)を指定することができない。
・漢文の返り点を指定することができない。


これらは日本語の書籍に多く見受けられる表現手法で、これらが使えないことによって文章の表現が制限されてしまう、または著者が伝えたいことが伝わりきれないのため、すでに出版されている書籍を電子化することが難しいなどの問題がありました。

しかしながら、2010年12月28日に IDPF から、2011年5月に完成予定のEPUB3.0では日本語に正式に対応されるという発表がありました。現在、IDPFのワーキンググループにていくつかのサブグループに別れて策定作業が行われています。以下、EPUB3.0のサブグループです。
(「来るべき「EPUB3.0」を整理する(1)」bulder より引用)


・Annotations (脚注や注釈、ルビ、正誤表など)
・EGLS Enhanced Global Language Support (縦書き対応)
・Metadata (EPUBに詳細なデータを持たせるための仕様)
・Navigation (目次の整備など利用しやすさの向上を図る)
・Rich Media, Ads, and Interactivity (動画や広告など動的コンテンツを扱う)
・Styling and Layout (ページレイアウトなど外観の向上)
・TextContent (EPUBファイル間の連携など)


では、これらは実際どのようなユーザ体験を私たちにもたらせてくれるでしょうか。
3月22日に行われた「EPUB日本語拡張仕様策定」の成果報告会では、その概要や成果物が報告されると共に、様々な分野への適用についても紹介されました。
次回はこの紹介についてレビューしていきたいと思います。

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