【経験談】Running Leanの考えをもとにした顧客インタビューのポイント!成功と失敗談から学ぶ、準備とコツ。
こんにちは、デザイナーチームの久保田です。普段はデザイン担当者ですが、昨年からシナップが取り組んで来たR&D活動の1チーム(通称 R2D2)では、デザインだけでなく企画や調査など職域関係なく取り組んでいました。今回は、その時行ったRunning Leanの考えを元にした「インタビュー」について、取り上げてみようと思います。リーンスタートアップの導入を検討している担当者様や、リーンスタートアップを導入していなくてもユーザーインタビューに関心がある方々の参考になれば幸いです。
シナップのR&D活動や、私が所属していたチーム(通称 R2D2)については過去の記事がとても分かりやすいのでチェックしてみてください!
Running Lean で言われているインタビューって知ってますか?
リーンスタートアップをご存知の方なら、『Running Lean』という書籍をご存知かと思いますが、『Running Lean』はリーンスタートアップの考えを実践するために必要な具体的手法を分かりやすく解説した書籍として有名です。もちろん「インタビュー」についても詳しく解説されていて大変参考になります。
読んでみるとインタビューには大きく「課題インタビュー」「ソリューションインタビュー」「MVPインタビュー」の3段階があり、最初の課題インタビューでしっかりと顧客の課題を探ってからデモ制作を行うと書いてあります。
- 課題インタビュー:顧客の世界観を知るためのインタビュー。本当の課題は何かを知るためのもの。
- ソリューションインタビュー:課題を解決するための製品は何が良いのかを、「デモ」を使ってソリューションをテストするもの。
- MVPインタビュー:製品を販売する前に、アーリーアダプターに直接販売して、デザインやポジショニング、価格を確かめるためのもの。
まず、課題インタビューで顧客の世界観を学習します。課題は何なのか?今はその課題をどうやって解決しているのか?などを、顧客へインタビューして探っていきます。 それが分かったら、解決するためのデモを作成して、同じく顧客にテストし、ローンチに必要な最低限の機能などを探っていきます。
そもそもリーンスタートアップとは、リソースを使い切る前に最初のプランからうまくいくプランへと反復的に移行する体系的なプロセスで、リーンキャンバスや顧客インタビューの手法を使いながら進められていきます。自分たちが課題だと考えているものが、本当に顧客にとっても課題となっているのだろうか?や、本当の課題はどこにあるのかをインタビューによって明らかにしていくことになります。
初めてのインタビュー
さて、少し前置きが長くなりましたが、ここからは私たちが実際に経験したお話をしたいと思います。
私たちがR&Dで取り組んだ「電子書籍公開サービス」では当初具体的にはこのような仮説を考えていました。
「試し読みなどの公開に積極的な出版社の編集者(=アーリーアダプター)は、
- EPUBの公開を手軽にできるようにしたい
- 人から人へ作品が広がるようにしたい
- 読み手の分析ができ、戦略につなげることが出来るようにしたい
という課題を抱えている」です。
そして、これらを解決するために、弊社の松島が開発しているBiB/iというEPUBリーダーを使ったソリューションを作っていました。EPUBをアップロードすると埋め込みコードが生成されるので、それを自身のブログなどウェブページにコピー&ペーストすると、EPUBファイルを埋め込んでそこで本を見せられる...というものです。(YouTubeの埋め込みみたいな感じですね!)
『Running Lean』では、課題インタビューで課題を探ってからソリューションインタビューをすることになっていますが、私たちは、自分たちの課題認識がおかしいのかどうかを確かめる前にソリューションまである程度制作してしまっていたので、課題インタビューとソリューションインタビューを同時に行うことにしました。
初めてのインタビューで良かったこと
インタビュイーを紹介でつなげられた!
出版社の編集者さんを主なターゲットだと見込んでいたので、たくさんの編集者さんにインタビューしたいと思っていました。ここは普段シナップがお仕事を一緒にさせてもらっている星海社さんや、もともと出版社界隈に知人の多い坂西や松島の紹介で次々にアポを取っていくことができました。
また、インタビューの最後に「他の出版社さんで紹介していただける方がいたらご紹介いただけませんか?」とうかがうと、ご紹介をしてくださりして、本当に助かりました。人の繋がりに支えられたと感じました。
台本を口語体で作った
インタビューを始める前に『Running Lean』に沿って台本を起こしたのですが、その際、口語体で書きました。チーム内にインタビュー経験者はおらず全員初めてだったので、いざというときは台本をそのまま読めば良いという安心感がありました。慣れてくるとスラスラと聞きたいことを言えるようになったので、はじめのうちは台本を読んで進めると良いと感じました。
二人一組でインタビューを行った
私たちはインタビューする人と、メモ係の二人一組でインタビューをしていました。そうすることで、インタビューワーは話すことに集中できるので聞き漏らすことも少なく、また深く話を聞けたので良かったです。
また、私の場合はインタビューの導入や話のつなぎが苦手だったので、メモ係として参加するときは他のメンバーがどういうふうに話すのかを聞き、次回自分がインタビューするときに取り入れるようにし、改善していました。
初めてのインタビューでの失敗
課題インタビューとソリューションインタビューを同時に行ったこと
ある程度動く物が出来ていたため、課題インタビューとソリューションインタビューを一緒に行ったのですが、ちょっと失敗だったかなと思っています。
数名インタビューした段階で、仮説としてあげていた課題3つがそもそも本当の課題ではなさそうだと分かってきたとき、デモを作った意味はあまりなかったなと感じたからです。デモを作る時間がもったいなかったなと、デモ制作よりも早くインタビューをして課題を確かめるべきでした。また、仮説3つは課題ではないと言いつつもデモを見てもらうとこれは面白いかもと言ってもらえることもあり、論点がズレてしまうので本当の課題をうまく探れないなと感じました。
これらのことから、最初に課題インタビューをしてしっかりと顧客が持つ課題を知ってからソリューションを考えたほうが、反復的に進行できるので確実にゴールへ近づいて行けると思いました。チームとしても、小さな確信を何度も得ながら進行できたほうが、企画・制作を進めるモチベーションになったのではないかなと思います。
本に書いてあるほど短時間では終わらない
本には1インタビューは30分程度と書かれていますが、私たちは1時間半くらいかかりました。それは、そもそも課題インタビューとソリューションインタビューを同時にしていたので2倍時間がかかるのは仕方ないのですが、もしかしたらあいさつや、前置きの説明が長くなりやすかったり、はっきりとした意見よりも、細かいニュアンスを重視し言葉を重ねる日本の文化的なものもあるのではないか!?と、個人的には感じました。
また、移動にも都内の電車やタクシーで30分〜1時間程度かかるため、「移動 〜 インタビュー 〜 まとめ」となると1インタビューあたり3時間は使っていました。今回のインタビューでは一人ひとりインタビューしてくださる方の会社や近くの喫茶店へ出向いて開催していたのですが、内容や対象者的に可能であれば、大人数の方に1箇所へ集まってもらい、次から次へとインタビューを進める方法もアリだと思います。
インタビュー内容の見直しが1回しかできなかった
5〜6人にインタビューしたら内容の見直しをしましょうと最初に決めていましたが、それに達成するまでに時間がかかってしまいました。チームメンバーはR&Dにつきっきりではなく通常のクライアント案件もしつつだったので、物理的にさける時間が少なかったことや、見直せるだけの多くのインタビューイーを探せなかったのが原因です。 最終的にインタビューできたのは10名ほどだったので、サービスの企画・制作に費やすまとまった時間を十分に確保することと、紹介以外にインタビューイーを見つける対策もするべきだったかなと思います。
二度目のインタビューで改善したこと、取り組んだこと
「電子書籍公開サービス」のインタビューを終えて、自分たちの仮説と本当の課題とのズレが分かってきました。そこで社内でも検討を重ねて、大きなピボット(方向転換)を検討することにしました。
そして、次のインタビューでは一度目の反省を活かして取り組むよう心がけました。
ソリューションを作る前に課題インタビューを行った
初めてのインタビューでは2つのインタビューを同時に行ってしまったため、準備もインタビューの所要時間も多くかかってしまいました。小さく作って試すという考え方で回すために、課題の仮説を立てたらすぐに台本を書き、課題インタビューを行いました。
インタビュイーを集めるために、アンケートをSNSで拡散した
「電子書籍公開サービス」のインタビューでは、幸いにも出版社関係の方々とのつながりがありましたが、ピボットした企画領域の人との繋がりはほぼゼロでした。そのため、対象の方々にGoogleアンケートフォームを利用して簡単なアンケート&インタビュー協力者を募ることにしました。すると、直接あってくださる方や、ビデオチャットや電話ならOKという方など多くの人からの協力を得ることができました。(ご協力頂いた方々には本当に感謝しています。ありがとうございました!)
対面以外のインタビューも優良だった
身振りや表情から読み取れることもあるため対面のインタビューが良いと思っていましたが、電話やビデオチャットでも案外成り立つのだなと分かりました。インタビューの見直しを1回以上して仮説の検証を行いたかったため、インタビュー数を多くすることは必須でしたので、電話やビデオチャットも取り入れてよかったなと思います。
まとめ
これらを行ったチームメンバー全員はインタビューするのが初めての経験だったので、本に書いてあるように準備をしても実際はスムーズに行かないこともありました。内容や状況に合うようカスタマイズしたり、自分たちのインタビュー経験が増えるにつれて上手になっていったと思います。なので、これからインタビューしようと思っているなら、まず仮説をたてたらすぐに台本を起こして、同時にインタビュー協力者を集めるようおすすめしたいです。
この体験談が、記事を呼んでくださった方々のお役に立てると幸いです!一緒に頑張りましょう:)