ヒトリKPTのススメとそこからふりかえるKPTのコツ

2016.11.09

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こんにちは。シナップ大川です。

シナップではプロジェクトの改善手法である"ふりかえり"のフレームワーク「KPT」をプロジェクトごとに行うよう義務づけています。
が、実際はお恥ずかしい話、リーダーによってなかなか運用、活用されないケースもあります。(正直なところ結構あります。)

しかしKPTのような"ふりかえり"の改善手法はとてつもなく地味ですが、しっかりやればとてもパワフルだよということを声を大にして言いたい!
そこで今回は僕が一人で実践している「ヒトリKPT」をご紹介しつつ、KPTがパワフルであることと、そこからふりかえるKPTのコツについてまとめてみたいと思います。

ふりかえりの大切さとKPT

物事をふりかえり、成功や失敗から学ぶことは「改善手法」と呼べば大げさですが、古今東西、みなさんも若い頃から自然と行っている行為ではないでしょうか。こうした"ふりかえり"はビジネスの現場でもよく行われ、企業によってはそれを「反省会」と呼んだりします。
これを上手に行う手法としてフレームワーク化したものがKPTだと言えるのではないでしょうか。

KPTとは

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KPTを知らないという方のために簡単にご説明すると、KPTはKeep、Problem、Tryの頭文字をとった名称で、プロジェクトの改善手法です。「できたこと/続けたいこと(Keep)」「問題だったこと/課題(Problem)」「Try(次にチャレンジしてみたいこと)」をプロジェクトメンバーと定期的に話すことによって、プロジェクトをより円滑に、効率良く改善する手法として、スクラムなどのアジャイル開発の現場でも用いられるプラクティスです。

KPTが効果的でない悪循環

しかし前述の通りKPTがうまく活用できていないケースもあります。
大抵はプロジェクトの実務が忙しく、ふりかえりのミーティングの場を設けずに日々を過ごしてしまう。つまり活用以前の問題なのですが、この話に尽きます...。
それでいて問題が顕在化したり、またはプロジェクトが終わった時にだけ、何が悪かったのかKPTをやりましょうという機運が高まります。時すでに遅しです。
先延ばしにすればするほど課題がたまり、こまめにやっていれば一回15分程度で終わるようなふりかえりも、長期間あいだをおいて行うと、溜まってしまったP(Problem)がどっと出てきて会議は何時間にも及ぶことがあります。また上がったP(Problem)の中にはすでに終わった事象で、今更いってもすぐには活かしようがないものも多くあがり、結果ミーティングは大変であった割には効果が感じられない、そんな感想を持つリーダーも少なくありません。
ひいてはさらにKPTがやりたくなくなって、次回も先延ばしにし...、こうした悪循環に陥っているように思います。

KPTのコツ「こまめにやる」

そうならないためにもKPTはこまめにやることがまず鉄則です。アジャイル開発手法スクラムの場合はスプリント単位で行うため習慣化しますが、ウォーターフォール型のプロジェクトでは注意が必要で、リーダーはスクラムのように定期的にKPTを行うよう心がけたいものです。(個人的にはどんなプロジェクトも2週間に一度は行うことをお勧めします。)

ヒトリKPT

ではKPTがどれだけパワフルかについて、本題のヒトリKPTについて話していきましょう。
前述の通り、物事をふりかえることは、より良く過ごすためによく行う行為です。
あの時ああだったから、今回はこうしようと思って行動し、結果として前回よりうまくいったという経験は誰にでもあるでしょう。
逆にすっかり忘れてしまって、同じ失敗を繰り返してしまったという経験もあるのではないでしょうか。
このように過去の経験を忘れずに活かすためにプライベートでもおすすめしたいのがその名もズバリ「ヒトリKPT」です。
文字通り一人で行うKPT。ひとりでふりかえり、Keep、Problem、Tryを考えメモしておく、それだけです。
しかし実はこのちょっとした習慣が日々の生活をよりよくしていきます。

ライブを楽しめているか

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例をあげたいと思います。
親しい方はご存知かもしれませんが、僕はロックなライブによく行くのですが、初めてライブハウスなるところに行った時は当たり前ですが何から何まで未知でした。行く前からびびってました。が、それよりもなによりも入り口でチケット代の他にドリンク代500円をとられるとは...w。
こんな時、「次回500円玉を用意しておくとスムーズ」とメモしておくのです。
他にもロッカーが全部埋まってしまっている、空いているロッカーを見つけられたはいいがロッカー代の小銭がない、両替機がない、ホールに持ち込むべきタオルや水(ペットボトル)をロッカーに入れたまま閉めてしまった...などなど、全部問題がロッカーじゃないか!これがロックか...。
ロッカー、ロックか、ロッカー、ロックか...。
というオヤジギャクはおいておいて、ありがちなトラブルは結構あるものです。しかもライブハウスごとに固有の問題もあります。

そこでここ数年はライブにいくたびに終わった翌日あたりにヒトリKPTを行います。
と言っても難しく考える必要はありません。基本はただのメモです。

服装や持ち物(持ち込むものとロッカーに入れるもの)、クロークの有無、ライブハウスへの交通、所要時間、前述のロッカーの数と自分の整理番号の時のロッカーの空き具合など行くたびに得た知見を僕の場合はEvernoteに書き込んでいます。時間もものの数分です。
ググっても出てこない個人的なもの(家からの経路とか)、ググった時の有益な情報や参照先URLなどなどメモしておきます。
次回も確認したいものはKeep、今回失敗したなと思ったことはProblem、次回こうしてみようというのがTryです。
こうしたメモをライブに行く前に見返すことで、最近ではとても快適にライブやフェスが楽しめるようになりました。
細かく話しませんが「ジップロックを持っていくと便利!」など意外なノウハウもこうしたふりかえりから生まれました。
今では忘れ物もなく、周りの人たちよりも快適に楽しめている自信があります。

繰り返すイベントはこまめなヒトリKPT

冒頭でKPTのコツは「こまめにやる」ことだと述べましたが、「次回がある」、「毎年繰り返すイベント」はヒトリKPTの対象にしています。
旅行やこどもの運動会、毎年行くイベントなどなど。基本的に繰り返すものには積極的にヒトリKPTを行いノウハウを貯めています。
さらに開催時期が決まっているものはEvernoteのリマインダー機能をセットしておいて、近づくと通知がくるように設定しています。
こうすることでふりかえりで得た知見を忘れずにさらに知見をバージョンアップしていくわけです。

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よく「めんどくさくないですか?」と聞かれることがありますが、運動会の当日に場所とりで何時間も前から校門前で並ぶよりも、前年の覚書からどこが穴場で、そこを取るにはどれくらいの時間にいけば十分かをメモし見返す方がずっと楽だと感じています。
ヒトリKPTのふりかえり対象は大抵個人的なイベント事ですから、思い出や写真とともに、日記を書いているように楽しみながらできるのでそこまで負担になることはありません。
なれてくると普通にイベントの最中も、「ああ、次回はこうした方がいいな」というアイデアはメモしておこうと自然にできるようになっていきます。

ヒトリKPTからふりかえるKPTのコツ

こうしたヒトリKPTからふりかえるKPTのコツには以下のようなものがあると考えます。

  • 次回もある、繰り返すイベントでは積極的に記録を残しておく
  • イベント後、忘れないうちにメモする(イベント中もあとで思い返したいことがあればメモしておく)
  • きちんとまとめなくても良いので思いついたことをメモしておくだけでも効果的
  • 書き込みやすく、見返やすい場所に入れておく

あまり手間暇かけず、簡単なメモだと思い、忘れないうちに記録するのが第一です。そのためにも、また次回利用するためにも、アクセスしやすい、書き込みやすく、見返しやすい場所に保存しておくのがいいでしょう。前述の通り、僕の場合はEvernoteを利用して、iPhoneからでもメモがとれるようにしています。スマホで写真を撮っていれておけば、言葉では記録しにくいものも簡単に取っておくことができるのでオススメです。

どれも当たり前のようですが、ようは当たり前のことを徹底できるかどうか、次にもっとうまくできる、楽をしている自分を想像し、楽しみながら書くのが良いのではないでしょうか。
ヒトリKPTのコツはチームで行うKPTでも活かせるのでぜひ試してみてください。

チームでのKPTの問題点とコツ

一方、ヒトリKPTはひとりだから出来る気軽さもあり、実際にチームでのKPTではこう簡単にいきません。まず課題となるのが

  • メンバーが集まる必要があること
  • 問題の多くはコミュニケーション
  • 課題に粒度がある

チームですのでメンバーが集まる必要があることはそれぞれの都合を合わせる必要があるため意外とハードルになります。定例会議のあるプロジェクトではプロジェクトの最初や最後に必ず行うよう習慣化できるようなルールを取り入れることをオススメします。

また、チームでのKPTでよく問題に上がるのはコミュニケーションです。仕事の問題の大部分がコミュニケーションの問題といっても過言ではありません。連携の問題であり、他のメンバーが絡むため、ヒトリKPTほど楽ではないのは事実です。とはいえお互いの意見をすり合わせ、次回はこうしてみようというTryを繰り返していくことで、情報共有の精度はあがり、お互いのグレーゾーンを残さず、プロジェクトが進むごとに円滑になっていくことでしょう。少なくとも問題をメンバーと共有することで、一人で問題を抱えていた時のストレスはだいぶ減り、解決に向けて前向きになっていくのではないでしょうか。

さらに、チームでのKPTでよく問題になるのは、挙げられる課題が多すぎる時です。そして、それらは誰の目からも重要なものから、言うほど問題ではないなど粒度にバラつきがある場合があります。
こうした場合、一度しか起きない、たまにしか起きないような再現性の低い問題の解決に時間をかけるのではなく、繰り返される問題にフォーカスすることをオススメします。
日頃のプロジェクトの進め方で非効率だと思う点、情報の共有が滞ってしまうことによるコミュニケーションの問題など、日常に潜む不合理、非効率など再現性の高い問題を改善することにKPTは向いていると感じます。

またせっかく貯めたノウハウは見返すことが重要で、KPTのたびにKeepにあるベストプラクティスはチームメンバーで読み合わせ、続けているか確認するといいでしょう。

KPTのフォーマットにこだわりすぎない

最後にもう一つ。KPTではK-P-Tの順に読み上げ、他のメンバーの意見を聞きながら進めていくのが一般的なスタイルですが、ひとつひとつ読み上げていくと非常に時間がかかる場合があります。
慣れてきたら、書かれたものの粒度、課題の再現性などを考慮して効果がありそうなものにフォーカスして話し合えると、短く有益な時間になります。
またK-P-Tの順にこだわらず、大抵話し合うポイントはPで、そこからTが生まれるパターンが多いのでP-T-Kなどの順にして進めるのもよいでしょう。KPTのフォーマットにこだわりすぎないというのもポイントの一つだと思います。
(個人的には最近はこの流れで進めることも多いです。)

余談ですがKPTの良いところはKeep(できたこと/続けたいこと)がある点で、よくいう「反省会」はProblemだけにフォーカスし、ダメだし会になりやすいところを、KPTではきちんとできている点をおさらいすることでメンバーの気持ち的にも前向きに会議を作ることができます。

とにかく細かくマメにやる

いかがだったでしょうか。ヒトリKPTからKPTのコツをふりかえってみましたが、ずっとこの記事で書いてきたように、大事なのはとにかくこまめにKPTをし、ノウハウを積み上げて、問題を大きくしない、これに尽きるかなと思います。
こまめにやっていけば、次第にKPTにかかる時間は減り、チームでも他のメンバーとのコミュニケーションが円滑になると感じられると思います。

そんなわけで長々と書いてしまいましたが、ぜひKPT、個人でもチームでも活用してみてください。

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