【東京インタラクティブ・アド・アワードレポート】 クロスメディア部門
こんにちは、内藤です。
引き続き東京インタラクティブ・アド・アワードのレポートをしていきたいと思います。今回は、インテグレーテッドキャンペーン部門/クロスメディアです。
クロスメディア部門は、応募総数47作品のうち、金賞2作品、銀賞6作品、銅賞4作品という結果になっています。金賞の2作品はどちらもKDDI株式会社によるもので、うち1つは以前紹介した『iida』が受賞し、また、銅賞の1つは前回紹介した郵便事業株式会社による『ヒルズポスト2009』が受賞をしています。
◆『Lupin Steal Japan Project』 Lupin Steal Japan Project
『Lupin Steal Japan Project』は、ルパン三世がファンと共謀し日本中で盗みを決行、その活動を広告キャンペーン化するというもので、ルパン三世のキャラクター関連商品新発売のセールスプロモーションを目的としたものでした。(参照サイト:『Lupin Steal Japan Project』 TIAA)
三光パートナーズ株式会社と株式会社 トリプルセブン・インタラクティブが制作指揮をとり、i2f、株式会社 スーパースター、株式会社 ピラミッドフィルム、株式会社 ピラミッドフィルム クアドラ、ビルコム株式会社が制作に参加しています。
このプロジェクトは、マスメディア、イベント、PR、ソーシャルメディアなど多くのクロスメディア戦略によってキャンペーンが展開されています。
ルパンがmixiにアカウント開設するところから始り、テレビCM、街頭広告などのマスメディアによって、犯行が予告されました。渋谷のモヤイ像が盗まれ、その犯行声明が渋谷のデジタルビジョン等を使って発表され、これが話題を呼び、テレビやインターネットのニュースで取り上げられます。2009年12月に「渋谷のモヤイ像、ルパン三世に盗まれる」というニューストピックをご覧になった方は多いのではないでしょうか。それから次々と日本各地で犯行が決行されていき、そのレポートがTwitter等のソーシャルメディアで公表されていきました。またユーザーにブログパーツを配布して日本中、世界中のウェブサイトを盗み出していきます。プロジェクトは、ユーザーとお宝を山分けする、というイベントを開催して締めくくられました。
「ルパン三世がアニメではなく実世界で世間をにぎわす」というストーリーから、大きく派手にキャンペーンが展開されました。しかしながら、大きなマスメディアを使って話題を作るだけではなく、ソーシャルメディアを使ったユーザー参加型キャンペーンが多く活用されています。キャンペーン目的であるターゲットへの新商品の訴求という部分は、どちらかと言えばソーシャルメディアを使ったユーザー参加型メディアの方で達成されているのではないでしょうか。実際にキャンペーンに参加してくるユーザーを新商品販売のターゲットと捉え、ルパン三世の世界観を共有することでSPにつなげています。ストーリーはソーシャルメディアを軸に展開され、マスメディアを使った話題性はストーリーのエッセンスになり、さらにソーシャルメディアでの展開を盛り上げる役割を果たしているようです。
◆『産経新聞・Web面、創設!』 株式会社 サイバーエージェント 株式会社ドワンゴ マイクロソフト株式会社 株式会社ミクシィ
『Web面』とは、社会面・経済面といったカテゴリーに肩を並べ、ネット界の出来事や重大ニュースをはじめ、ネットをめぐる技術革新やコンテンツなど、ネットユーザー向けの最新情報を新聞社ならではの視点で編集し掲載した、産経新聞の期間限定の新紙面です。『Web面』では、新聞とウェブの共存・共栄を目指しています。(参照サイト:『産経新聞・Web面、創設!』 TIAA)
株式会社博報堂DYメディアパートナーズと株式会社博報堂が指揮をとり、株式会社シェイク、株式会社ドワンゴ、株式会社 博報堂プロダクツが制作に参加しています。
インターネット上には様々なニュースポータルサイトが存在し、またブログなどのソーシャルメディア経由でも情報がやりとりされるようになり、ウェブは情報収集の方法として一般化しました。しかし、根拠のない情報が無責任にひろがっていき、情報の信頼性という部分が欠如しています。一方で、日本の新聞メディアの歴史は古く、新聞の持つブランド力と信頼性に未だ揺るぎはありません。しかしながら、デジタルメディアの登場で売上げは低迷し、社会の大きな流れから取り残されている感は否めません。その、一見両極端にあるような2つのメディアが共存、共栄を目指した今回のプロジェクトは、メディアの可能性を大きく感じさせてくれるものでした。新聞上で読むオンラインコンテンツは、それをオンラインで読むときよりも、より社会に必要な情報であるかのように感じるから不思議です。普段はオンラインの情報なんてと思っていた人も、紙面でデジタルコンテンツを読むことで知的好奇心を刺激された方も多いのではないでしょうか。
お互いがお互いの特性を生かして共存していくのは言うほど簡単な話ではありませんが、今回のキャンペーンをきっかけに、その可能性にこれからも積極的にアプローチしていってほしいと思います。