多様化するユーザー行動から考えるUXデザインの新たな出発点 ユーザージャーニー最適化 サイト体験から顧客体験へ

公開日: 2025.10.22

こんにちは。シナップ大川です。

今回はシナップの活動報告も兼ねた小冊子『SINAP Journal 2025 Summer』に掲載した「多様化するユーザー行動から考えるUXデザインの新たな出発点 ユーザージャーニー最適化サイト体験から顧客体験へ」の記事をご紹介します。

サイト体験を超えて

私たちは日々、サイトのUI改善やコンテンツ更新を通じて、ユーザーにとって快適な体験づくりに努めています。しかし現在のユーザー行動は極めて複雑です。

ユーザーは検索エンジンによる情報収集、SNSでの評判確認、複数サービスの比較検討、さらにはオフラインの体験を行き来して意思決定を行います。近年ではAIを活用した検討プロセスが加わるケースも増えています。

つまり、サイトというひとつの接点だけを見つめていては、ユーザーの本当の行動や思考を捉えきれません。

そこで本特集では、「ユーザージャーニー最適化」という視点をもとに、サイトに至るまでの期待や背景、そして訪問後に続く体験も含め、顧客体験全体を再設計する方法を探っていきます。

「点」ではなく「線」で見る

ユーザージャーニー最適化は、単に既存のカスタマージャーニーマップを細かく修正することではありません。

課題を自覚していない状態から、認知・興味を経てロイヤル化まで、ユーザーの感情や行動を連続した物語として捉え直し、その中で自社サイトが果たす役割を再設計することを指します。

重要なのは、タッチポイントごとにKPIを置くだけでなく、「次の行動につながるか」を評価する視点です。

最初のステップは、ユーザーが目的を達成するまでに触れるタッチポイントを漏れなく可視化することです。

広告、検索結果、比較サイト、レビュー記事、店舗での接客、そしてAI。これらを一枚のキャンバスに重ねてみると、サイトでの課題が単独ではなく連鎖の中で発生していることが分かります。

この俯瞰図が、改善の優先順位を決める羅針盤になります。

競合サイトも含めた比較行動の把握

意思決定時、ユーザーは複数のサイトを行き来し、価格や機能だけでなく、使いやすさや信頼感といった感覚的要素を総合的に判断しています。

この行動を理解するにはユーザー視点で自社と競合を実際に体験することが有効です。

「比較表がすぐ見つかる」「メリットが視覚的に整理されている」など、他社にはあって自社にはない工夫が明らかになります。これらの差分は、差別化や改善のヒントとなります。単に項目を並べるだけでなく、情報の見せ方や導線設計が、ユーザーにとって親切で納得感を生むものになっているかを考えましょう。

表面的な違いだけでなく、ユーザーの行動や心理の背景に目を向けることで、より本質的な改善へとつながっていきます。

意思決定の瞬間に寄り添う

ユーザーが複数の情報源を比較し、思考をめぐらせながら最終的な意思決定を下す〝 その瞬間〟を想像してみてください。そこで求められるのは、単なる情報の提供ではなく、「これなら自分にフィットしそうだ」「後悔はしないだろう」と感じられる納得感や安心感です。

これは、スペックや価格といった比較要素だけでなく、ブランドの信頼感や、サイト内の導線、説明の丁寧さといった非言語的な要素にも強く依存しています。

私たちが目指すべきは、この瞬間に寄り添えるサイト体験をデザインすることです。

そのためには、訪問直後のファーストビューにこだわるのはもちろん、FAQや事例紹介、お客様の声など検討プロセスの進捗とともに出てくる疑問や不安に応える後方支援的なコンテンツも、意思決定を後押しする重要な役割を担っていると再認識する必要があります。

体験をつなぐコミュニケーション設計

ユーザージャーニーを最適化するうえでは、サイト内だけでなく、オフラインでの体験も含めた「体験のつなぎ方」に目を向けましょう。

特にリアルな製品などの場合は「実際に使ってみたい」「本物を見て確かめたい」と感じるユーザーに対して、リアルな接点を用意できているかは大きなポイントです。

たとえば、サイトで製品に興味を持ったユーザーに、近くのポップアップショップや体験型店舗の情報を提供することで、オンラインからオフラインへとスムーズに導くことができます。

仮にオフラインの施設がなかったとしても、こうした心理に応える形で、実際の使用感やサイズ感を伝えるショート動画やレビューコンテンツを用意することで、ユーザーの不安や疑問を解消できます。

AIが変えるジャーニーの風景

ユーザージャーニーはAIの登場で大きく変わりつつあります。従来は検索エンジンや比較サイトで情報を集め、ユーザー自身が取捨選択していましたが、現在は生成AIを使って「おすすめを聞く」「違いを要約させる」「自分に合う選択肢を抽出する」といった行動が一般化しつつあります。意思決定の主導権がAIという〝もう一人の相談相手〟に分散し始めているのです。

一方、運営側もAIを活用しています。ユーザーの行動履歴をもとにしたパーソナライズやリアルタイム最適化によって、体験はより動的で個別化されていきます。また、AIが自社サイトのFAQや製品情報を引用しやすいよう構造化データを整えることや、文脈を持って情報を伝えるコンテンツ設計など、新たな視点でのジャーニー設計が求められるでしょう。

AIとともに意思決定する時代。そこにどう応えていくかが、これからのユーザー体験において避けて通れないテーマなのです。

「最適化」の旅は終わらない

ユーザージャーニー最適化は一度実施したら終わるものではありません。ユーザーの行動や価値観、市場環境は常に変化します。定期的にユーザーを観察し、仮説を立てて検証し続けることが求められます。このプロセス自体が、ユーザーを深く理解するための営みであり、ブランドとしての姿勢を示す活動でもあります。

シナップでは、こうした体験設計をお手伝いしています。経験豊富なUI⁄UXスペシャリストが、サイト改善からサービス全体を見据えた本質的なUXデザインまで、一貫した支援を提供します。お気軽にお問い合わせください。

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