複数プロジェクトを乗り切る!若手Webディレクターのためのタスク管理術【Web業界つまずく前に知りたい話】

この企画について
Web制作会社の若手ディレクターさんや、事業会社のWeb担当者さまのヒントになるかも?!
Web業界で長年活動している方々に、いただいたお悩みについて話を聞いてみる座談会形式の企画です。
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パーソナリティ
坂西(バンザイ)
Web制作会社社長、プロデューサー
(業界歴 約30年)
大崎(オオサキ)
プロジェクトマネージャー
(業界歴 約25年)
三國(ミクニ)
この企画のファシリテーター
(業界歴 約18年)
【お悩み】タスク管理が苦手
「Web制作会社でディレクターとして働いて3年目になります。最近、任される仕事の幅が広がり、複数のプロジェクトを同時進行することも増えてきました。タスクリストを作っても、その量が多すぎてどこから手を付けていいか分からず、毎日焦ってばかり。先輩に相談しても『慣れるしかない』と言われてしまい、この状況をどうにか打破したいと思っています。同じような立場で悩んでいる人は多いのではないでしょうか?何か具体的なアドバイスがあれば、ぜひ教えてください!」
この記事でわかること
- 抱えているタスクを整理し、可視化する具体的な方法
- 混乱しがちなタスクに優先順位をつける考え方
- 複数のプロジェクトを効率的に進めるためのヒント
- 忙しい状況でもメンタルを保つための重要な考え方
1.まずはタスクを「書き出す」ことから始めよう
タスク管理の悩みについて、まずは基本的なところからお聞きしたいと思います。タスクが重なってしまうという状況について、どう考えればよいでしょうか?
まずは、持っているタスクを全部書き出してみることから始めるのが良いと思いますよね。漠然と「たくさんある」と思っているだけでは、何が重なっているのか把握できません。自分が何を抱えているのかを明確にすることが第一歩です。
人間の頭で覚えていられるタスクって、5個ぐらいが限界なんだよね。それ以上になると「いっぱいある」という感覚になって、判断ができなくなってしまう。
そうですね。頭の中だけで管理しようとすると、不安が大きくなります。「見える化」することで漠然とした不安の正体を掴めるんですよ。
メンタルヘルスの観点からも、まずは書き出すことが大事だよ。見える化することで、実はそんなに多くないことに気づくこともあるしね。
課題管理表やリスク管理表を「時間がないから書けない」という人がいますが、実は逆なんです。書くことで時間を作れるんですよ。「書く時間がない」ではなく「時間を作るために書く」という発想が大切です。
その通り。頭のメモリを解放できれば、他のことに集中できるからね。
「忘れるために書き出す」という発想は面白いですね!
記録することで安心感が生まれるんです。タスク管理ツールでもエクセルでも何でもいいから、まずは書き出しましょう。ちなみに、2分で終わるような簡単なタスクはすぐ実行するのもありですね。
GTD(Getting Things Done)の考え方にも通じるね。忙しい時こそ、タスクを可視化することが重要なんだよ。
小まとめ
- タスクをすべて書き出して可視化することが第一歩
- 書き出すことで頭のメモリを解放し、集中力を高める
- 「時間がないから書けない」は誤り、書くことで時間を作れる
2.優先順位の決め方とスケジュール管理のコツ
タスクを書き出した後、どのように優先順位を決めていけばよいでしょうか?
カレーライスを作る時のことを考えてみましょう。材料を買う、材料を切る、炒める、盛り付けるなど、タスクには自然な順序があります。材料を買う前に切ることはできないし、炒める前に切る必要がありますよね。このように、洗い出したタスクの順番を決めていくと、自然と優先順位が見えてきます。
なるほどね。まずは順序の依存関係を見極めることが重要だね。
そうなんです。依存関係を整理すると、「これを先にやらないと次に進めない」というものが見えてきます。コントロールできない要素ほど優先して着手するといいですよ。
複数のプロジェクトがある場合は、WBS(Work Breakdown Structure)を作って、クリティカルチェーンを確認するのが重要だよ。
WBSというと初めて聞く方も多いかもしれませんね。具体的にはどんなものですか?
簡単に言うと「プロジェクトでやることを全て書き出して整理したもの」だね。プロジェクト全体の作業を細かく分解して、階層的に整理するんだよ。
そうですね。例えば「Webサイト制作」という大きな仕事を、「要件定義」「設計」「デザイン」「コーディング」「テスト」といった段階に分け、さらにそれぞれの中身を細かく分解していくんです。全体から詳細へとトップダウンで分解していくイメージですね。
重要なのは、WBSはスケジュールそのものじゃないってことだよ。WBSはプロジェクトの「範囲」を明確にするもので、これをもとにしてスケジュールを作っていくんだ。
クリティカルチェーンというのは、リソース制約も考慮したプロジェクト管理手法のことですね。複数のプロジェクトを並行して担当している場合は、まさに「リソースの競合」を考慮する必要があります。タスクの洗い出し、順序設定、期間設定をした後に、「この人に同じ時期に複数のタスクを依頼するのは無理があるな」といった状況が見えてくることがあります。そういったリソースの取り合いを避けるためにも、事前のタスク整理は非常に重要です。
そう。同じ日に同じタイミングでタスクが重なっていないか、きちんと見極める必要があるね。
ちなみにこの時は自社だけでなく、 発注者側の状況も考えることが大事です。発注者も定常業務の中で複数のプロジェクトを掛け持ちしていることが多く、彼らなりの制約や事情があるんです。お互いの状況を理解し合うことで、現実的な提案をしていくことが可能です。
若手ディレクターの場合、リソース競合の調整は上司の役割でもありますよね?
そうだね。とはいえ、自分の裁量でできる部分と、上司に相談すべき部分を分けて調整していくのが良いと思うよ。
小まとめ
- タスクの自然な順序と依存関係を見極める
- WBS(Work Breakdown Structure)を作成してプロジェクトの全体像を把握する
- 複数プロジェクトの場合はリソースの競合を考慮する
3.クライアントとのコミュニケーションで気をつけるべきポイント
スケジュール通りに進めるのが難しい場合、クライアントとのコミュニケーションで気をつけるべきことはありますか?
要望が変わるのは当たり前だと思っておくことが大事です。クライアントは 自社の事業 に生かしたいと思って投資しているんですから。
その通りだね。ただし、プロジェクトの目的やゴールは変えないようにしましょう。
そうですね。目的はぶれないようにして、そこを軸にスケジュールやコストの調整を提案していく。
プロジェクトの目的を共有しておけば、「このゴールに向かうためにはこの選択肢がありますが、どうしますか?」という会話ができるようになるよ。
要望のコントロールも重要です。オープンに「どうしたいですか?」と聞くのではなく、「A案とB案、どちらが好みですか?」と選択肢を提示する方が効率的です。
そうだね。無限に広がる可能性を狭めていくイメージだよ。
「何でも言ってください」と言うと、実現不可能なことを言われたりして、後で調整が大変になります。
詰め将棋のように、相手の反応を予測して準備しておくということですね。
そうだね。3回目で決めるつもりで、1回目、2回目と進めていく。お題にたいしてプロとして考えたプロセスを共有して、共感してもらうことが大事だよ。
クライアントも「この人は考えてくれている」と感じれば、信頼関係が築けるんです。
小まとめ
- プロジェクトの目的やゴールはぶれないよう維持する
- 選択肢を提示して要望をコントロールする
- プロセスを共有して信頼関係を構築する
4.スケジュール管理の具体的なテクニック
スケジュール管理で、具体的に気をつけるべきポイントはありますか?
プロジェクトの期間によりますが、比較的短納期の案件なら1週間単位ではなく、2-3日単位で調整するのが効果的です。例えば水曜日の案件なら金曜日まで、金曜日の案件なら月曜日までというように。締切を切り直す際も、なぜ1週間も必要なのか考えてみるといいですね。
そうだね。1週間上げてしまうと、結局最初の1日は何もやらないことが多いからね。
人間は締め切り直前にならないと動かないものなんです。短いスパンで区切った方が効率的に進みます。
最短の納期を提示して、そこから調整する方が良いよ。「最短でいつまでにできるか」を考えることが重要だね。
品質と納期のバランスも重要です。「1週間かけて100%の品質」ではなく、「3日で70%の品質」という選択肢もあり得ます。
完璧を目指すと時間がかかるから、「まずはここまで」という線引きも大事だよ。
クライアントによっては、完璧よりもスピードを求めているケースもあります。その見極めも重要です。
若手のうちは「完璧にしなきゃ」と思いがちだけど、必要な品質と納期のバランスを考えるのがプロだよ。
小まとめ
- 短いスパン(2-3日単位)で区切ることで効率的に進める
- 品質と納期のバランスを考慮する
- 完璧を目指すより「まずはここまで」という線引きをする
5.まとめ
今日の話をまとめると、タスク管理の基本は「書き出すこと」から始まり、優先順位を決めて、クライアントとのコミュニケーションを適切に取ることが重要ということですね。
そうだね。タスク管理は、プロジェクトを成功させるための基本中の基本だよ。小さな成功体験を積み重ねていくことが、自信につながるんだ。
そして、完璧を目指すのではなく、自分なりの管理方法を見つけていくことが大切です。最初は大変かもしれませんが、少しずつ改善していきましょう。
お二人とも、貴重なアドバイスをありがとうございました!若手ディレクターの皆さんも、ぜひ今日のポイントを参考にしてみてくださいね。
おさらい
- タスクはまず書き出すことから始めよう
- 優先順位は自然な順序やリソースの制約を考慮して決める
- クライアントとのコミュニケーションでは、選択肢を提示して調整する
- スケジュール管理は細かい単位で調整する
- 完璧を目指さず、自分なりの管理方法を見つけていく
- 混乱の原因は「把握できていない」ことにある
- まずはタスクを全て書き出す、可視化する
ここまで読んでいただきありがとうございました!お悩みをお持ちの方はぜひ投稿をお願いします!
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